株式投資で利益が出た年は税金を払う一方で、損失が出た年に何もしないのは大きな損です。損益通算と繰越控除の制度を使えば、株の損失で払いすぎた税金を取り戻したり、将来の利益にかかる税金を減らしたりできます。本記事では、複数口座にまたがる損益通算のやり方と、最大3年間使える繰越控除の手続き・注意点を、2026年時点の制度にもとづいて解説します。
上場株式の売却益や配当には20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金がかかります。損益通算と繰越控除は、この税負担を合法的に軽くする最も基本的な節税テクニックです。
この記事の内容
損益通算とは|利益と損失を相殺する
損益通算とは、同じ年の利益と損失を差し引きして、課税対象となる利益を圧縮する仕組みです。上場株式の場合、次のものが通算できます。
具体例で見る効果
たとえばA証券でX株を売って40万円の利益、B証券でY株を売って30万円の損失が出たとします。何もしなければ利益40万円に対し約8万1,260円の税金がかかりますが、損益通算すれば課税対象は差引10万円となり、税金は約2万300円に減ります。差額の約6万円が節税額です。
複数口座の損益通算には確定申告が必要
同じ「特定口座(源泉徴収あり)」の中であれば、売却損と配当の通算は証券会社が自動で行ってくれます。しかし、上の例のように複数の証券会社にまたがる場合は、自分で確定申告をしないと通算できません。各社の年間取引報告書を集めて申告することで、天引きされすぎた税金が還付されます。口座区分の基本は特定口座の選び方もあわせて確認しておくと理解が深まります。
繰越控除とは|損失を3年間持ち越す
その年の利益と相殺しきれなかった損失は、確定申告をすることで翌年以降最大3年間繰り越せます。これが「繰越控除(譲渡損失の繰越控除)」です。翌年以降に利益が出たとき、繰り越した損失と相殺して税金を減らせます。
3年間の繰越イメージ
| 年 | その年の損益 | 繰越後の状況 | 課税対象 |
|---|---|---|---|
| 2026年 | ▲100万円 | 100万円を繰越 | 0円 |
| 2027年 | +30万円 | 残70万円を繰越 | 0円 |
| 2028年 | +40万円 | 残30万円を繰越 | 0円 |
| 2029年 | +50万円 | 繰越分30万円と相殺 | 20万円 |
この例では、2029年の利益50万円のうち20万円だけに課税され、約4万円の税金で済みます。繰越控除を使わなければ約10万円かかっていたところ、3年間の申告継続で約6万円節税できた計算です。
申告するときの注意点
- 払いすぎた税金が還付される
- 損失を3年間繰り越せる
- 配当と損失を相殺できる
- 利益が合計所得に加算される
- 扶養から外れる恐れがある
- 国民健康保険料が上がる場合がある
- 毎年連続申告の手間がかかる
特に配偶者の扶養や国民健康保険に加入している人は、申告によって利益が所得としてカウントされ、扶養判定や保険料に影響することがあります。還付額と保険料増加額を比較し、有利なほうを選びましょう。配当の課税方式については総合課税と申告分離課税の比較も参考になります。
手続きの流れ
- 各証券会社から「特定口座年間取引報告書」を入手する(電子交付が主流)。
- 確定申告書に「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を添付する。
- 損失を繰り越す場合は「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除用」の付表を作成する。
- e-Taxまたは郵送で、原則翌年2月16日〜3月15日に提出する。
還付申告は年明けすぐから可能で、e-Taxを使えば証券会社のデータを取り込んで比較的簡単に作成できます。
NISAの損失は損益通算や繰越控除に使えますか?
損失を繰り越すのに毎年申告が必要ですか?
給与所得と株の損失は通算できますか?
源泉徴収ありの特定口座でも申告できますか?
まとめ
損益通算は「同じ年の利益と損失を相殺する」、繰越控除は「相殺しきれない損失を3年間持ち越す」制度です。損失が出た年こそ確定申告をすることで、将来の税金を確実に軽くできます。手間はかかりますが、数万円単位の節税につながることも珍しくありません。他の税金テーマは投資カテゴリーもご覧ください。